海辺の叙景

音楽の話などをします

ファッション雑誌

 ある休日に僕は音楽雑誌を物色するべく、本屋に入りました。しかし、僕が読みたかった雑誌はことごとく置いておらず、仕方なく本屋の中をプラプラと見回りました。そして、普段なら近寄りもしないファッション雑誌のコーナーの前に立ち止まりました。全くと言っていいほどファッション雑誌は読まないのですが、これはいい機会かもしれないと思い、若者向け、要するに僕くらいの年齢の人達がターゲットと思われる雑誌を手にしました。すぐ横では、なんだか洒落た服を着ていてルックスの良い男性がファッション雑誌を立ち読みしていたということもあり、中学生の時に買ったジャンパーを未だに着ている自分がファッション雑誌を立ち読みするのは少々気が引けましたが、もう戻れません。そのお洒落な人にバカにされるのでは、という過剰な自意識を持ちつつ僕は雑誌のページを開きました。


 僕は息を飲みました。どのページをめくっても、僕にとってはまるで異世界の住人のような人達の写真がたくさん載っているのです。そして、驚くべきことに、多くが10代後半から20代前半の方達なのです。もちろんターゲット層が若い人向けだとはわかっていましたが、これほど多くの若い人が読者モデルとして載っていることに驚きました。なるほど、こういう世界もあるのだなと思いましたが、なんとも馴染めない感じ、というか違和感を僕は感じました。


 多くのページはモデルの写真やブランド物の服に関する記事が占めていましたが、後ろの方には音楽の記事があったので読んでみました。今話題のロックバンドのライブレポートなんかが載っていたのですか、どちらかというと、やはりファッション誌の記事ということもあり、お客さんのファッションチェックなどの記事が中心でした。僕はライブハウスに遊びに行く時は、ファッションに気を使うというよりタバコくさくなってもいい服を着ていく人間なので、ライブにお洒落をして行く人の記事というのはなんだか少し違和感を感じるものでした。


 「興味がある記事が特になかったというか、なんだか違和感しか感じなかったなあ」と僕は最後の方のページをパラパラとめくり雑誌を閉じました。しかし、最後の方になんだか引っかかるページがあったような気がしました。おそるおそる雑誌をめくり直し後ろの方のページを見ていると、そのページが見つかりました。いわゆる、包茎治療の広告ページでした。


 1ページも興味があるページがなかったと思っていましたが、包茎治療の広告ページは非常に興味をそそられました。もし、この雑誌に包茎治療の広告ページがなければ、僕にとってこの雑誌はまるで価値のないものなのかもしれませんが、包茎治療の広告ページが存在することでこの雑誌は僕にとってある種の価値を持つものとなると言っても過言ではないのです。思わず、その雑誌を買ってしまおうかと思いましたが、わりと高かったのでやめました。


 ちなみに、僕が包茎かどうか知りたいですか?うーん、直接聞いてくだされば答えます。