海辺の叙景

音楽の話などをします

ゲームセンター

 何度か、このブログにも書いていますが、僕はドイツで生まれて小学校低学年までほとんどの時間をそこで過ごしました。幼稚園に通っていた頃に少しだけ日本に住んでいたこともありましたが、如何せん期間が短いのであまり記憶にはありません。


 ドイツに住んでいた間に何度か引越しをしたのですが、最後の何年かはニュルンベルグという所に住んでいて、家は郊外にある閑静な住宅街にありました。週末になると誰一人、外を歩いていない程に閑静で、家から車で5分ほどのところには針葉樹林の森があり、その先には石畳が敷き詰められた歴史のある城下町がありました。今思えば、まるでアニメや映画の世界のような場所に住んでいました。


 小学3年生の春に僕は日本に帰国し、来年度から小学4年生になるので、それに向けて準備をしていました。確かその頃だったと思うのですが、僕は親に連れられ近くにあるショッピングセンターで買い物をしていました。買い物を終え、ショッピングセンターを出るときに、僕はなんだか奇妙な店を発見したのです。それは所謂、ゲームセンターでしたが、ドイツ出身の田舎者にはあまりにも刺激的な雰囲気が漂っていたので、親と一緒に入ってみることにしました。中に入ると薄暗い部屋にきらびやかなゲーム筐体がたくさん並んでいて僕は圧倒されました、それに加え、異様な空間であるにも関わらず何事もないように出入りしてゲームをする人たちに驚きました。こういう場面で冷静でいられるのが大人なのだな、と思いました。


 今でも、なんとなく覚えているのですが、入り口近くにはメダルゲームのコーナーがありました。しかし、なんだかそれは難しそうだったのでパスしました。奥の方に進んで行くと、わりと難易度が低めに見える筐体が並んでいるコーナーがありました。その中で、とりわけ小学3年生の僕を魅了したのは、犬の散歩をするゲームでした。筐体にはベルトコンベアが付いており、その上を歩いて操作するゲームだったと思われますが、ベルトコンベアの部分が特に魅力的でした。僕は親にお願いし、1度だけそのゲームに挑戦することになり、100円玉を筐体に入れゲームはスタートしました。


 しかし、ゲームがスタートしても、肝心のベルトコンベアが動かないのです。僕が操作方法を間違えていたのか、筐体が壊れていたのかわかりませんが、一瞬にして自分のライフポイントは削がれ、あっという間にゲームオーバーになってしまいました。僕は騙された気分になり、非常に不愉快でした。筐体の電飾と画面に映るゲームオーバーの文字が僕のことをあざ笑うかのようにピカピカと点滅していました。100円払ってまでなんで僕はこんな気分を味わわなければならないのか。それ以来ゲームセンターが嫌いになってしまいました。


 ドイツにはあまり無いもので、日本にあるものは僕には非常に奇妙なものに見えます。前にも書きましたが、電車などはその一つで、僕には非常に魅力的に見えました、しかし、ゲームセンターは最初の印象が悪すぎたため、どうも好きになれないのです。春になると、自分がゲームセンターが嫌いだということについて改めて考えさせられます。