海辺の叙景

音楽の話などをします

肯定

 「人の目を気にするな」という言葉を僕は頻繁に耳にするのですが、その言葉を聞く度にモヤモヤとしたものが頭の中に残ります。もちろん、どのようなことを言いたいのかはある程度つかむことができるのですが、あまりにも極端な理想論に思えてしまうのです。なんだか、揚げ足取りのようですが、そもそも「人の目を気にしない」ことはできないと思います。多かれ少なかれ、僕らは他人と関わりあいながら生きており、無意識のうちに、人に見られているということを意識しています。考えてみると、例えば、僕らが着る服を選ぶとき、他人に見られる事を意識して選んでいますよね。

 

 他人からどう見られるのかをすごく意識してしまうことは、僕はよくありますし、たぶん誰でもあると思います。自意識過剰な状態に陥ってしまうことは決して楽しいことではありませんし、苦しいことです。それに対して、「人の目を気にするな」という言葉は、そのような誰もが感じるような苦しさを無視し、否定し、まるで自分たち人間は確固たる独立した存在として生きていける、という理想論を表している気がします。

 

「ケガをしても痛がるな」という言葉とニュアンスが近いと感じるのです。

 

 「人生とはこうあるべきだ」など、強い主張を持った音楽もあって良いと思うのですが、僕としては、自分が音楽を続ける上でのテーマとして、「ありのままを肯定する」というものがあります。もちろん、文章書く上でも同じです。

 ありのままの自分を肯定する、あるいは、他人を認め、肯定するということはそれほど簡単なことではありません。しかし、音楽や映画、文学などの芸術はその手助けをしてくれるのです。そういう意味で、芸術は自分たちの「生活必需品」であると僕は強く感じるのです。